そのイケメン、オタクですから!
更衣室に駆け込んだら、休憩中のリリがいて、興奮した声をあげた。

「ナナー! 誰なのあのイケメン? まさか彼氏ぃ?」
「セノジュンレッドだよ。……私の、彼氏だけど」

彼氏って言葉が気恥ずかしくて、最後は声が萎む。

「うそ! レッドってあんなイケメンだったの!? わからないもんだねー。でもでも、留愛がナナだって、知らないんだよね、ね?」

ウィッグ外して洗面所で顔を洗う。
色黒ファンデを落とすと白い肌が出てきた。

自分で言うのもなんだけど、すっぴんの方が美人だ。
先輩は留愛のどこがいいんだろう。

「うん。だからこれからも秘密にしといてね」
「いいけどぉ、リリにもお友達のイケメン紹介してよ」

「先輩に私がナナだって言えたらね」

手早く化粧をして髪を巻く。
今日にもう結ぶ時間はないや。

「何で秘密なのー?」
興味津々で聞いてくるリリを適当にあしらいながら着替えたら、完成。

鏡の前で一回転してみるけど、完璧。
どう見ても、留愛には見えない。

リリも感心しながら「いつ見てもすごいね、ナナ。ゆうにゃんご主人様も気付かないはずだわ。あ、ゆうぴょんだっけ?」と言っていた。
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