そのイケメン、オタクですから!
「あ、ナナちゃん」
「お帰りお待ちしてました。ともりんご主人様」
セノジュンパープルに笑顔でご挨拶をして、ブルーとイエローにも声をかける。

バクバクする心臓を抑えながら、及川先輩に向き直った。
「お帰りなさいませ。ご主人様ぁ。申し訳ありません。ナナ、お名前が思い出せなくてぇ……」
いつもの上目遣いで首を傾げてみせる。

珍しく先輩が目を合わせてきたから、余計に鼓動が早くなる。
「やっぱりナナちゃんでもわかんないかぁ、コイツ、悠斗だよ」ってパープルが嬉しそうに言った。

「ゆうぴょんご主人様ですかぁ? ごめんなさいっ、いつも素敵だけど、今日はとびきり素敵だったからぁ……」

及川先輩は「ありがと」って王子様みたいな笑顔を向けてきた。

せ、せんぱーい!
完全に学校モードじゃないですか!
オタクモードはどうしたんですか!

ここでそんな顔見せられたら、私自分がナナなのか、留愛なのかわからなくなっちゃいます!

「悠斗は今日、良いコトあったからご機嫌なんだ。ナナちゃんがいない間に彼女連れてきたんだって、ここに」

えぇ。
存じ上げております。
それ私ですから。

なんて言えるわけもない。

「うるせーよ」ってそっぽ向いた及川先輩……ダメだ、ここではゆうぴょんご主人様と呼ぼう、を無視してセノジュンパープルは続ける。

「彼女にオタクだって打ち明けたから、もうコスプレやめるんだって。でも」
「オタクって言うな」ゆうぴょんご主人様が口を挟む。

「今度はナナちゃんがいる時に連れてくるって。彼女が誤解しないように」
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