そのイケメン、オタクですから!
「お疲れさまでーす」
日直だったから遅れて生徒会長室に入ると、室内の空気は重かった。
「先輩……」
声をかけると及川先輩から一枚の紙を渡された。
素っ気ない黒の文字で印刷されているのは「前向きに検討いたします」の文字。
これだけ?
私の半年は……たったこれだけで終わっちゃったの?
「却下」か「承認」のどちらかのはずだった。
それなのにどうして……?
言いにくそうに、桜井先輩が口を開いた
「学校もずるいよね。簡単に却下は出来ないくらい署名が集まってるから、これで片付けようとしてる。あと半年待てば悠斗が生徒会長じゃなくなるから、そっからひっくり返せばいいって思ってるんじゃない?」
そんなのって、ないよ。
及川先輩もあんなに頑張ったのに、納得できない。
「納得できません。私先生に……」
職員室に向かって駆けだそうとした私の肩が、力強い腕で掴まれた。
「いい」
落ち着いた声で言った及川先輩だけど、内心は穏やかじゃないはずだ。
誰よりも沢山努力して、成績だって落とさないように勉強して、公約実現の為に頑張ってきたのに。
私が泣いちゃダメだ、先輩の方が辛いんだから。
それなのに私の感情は勝手に瞳から溢れる。
「で……もっ……先輩がっ……あんなにっ……ひっ、く……」
先輩の腕が背中に回って、私を包む。
「いいんだ」
「よく、なっ……い……」
後ろでそっと扉が閉まった音がした。