そのイケメン、オタクですから!
「何で、バイトしてんの?」
「前に母子家庭だって言いましたよね、うちの母、20歳でホストの子ども産んだんです。でもあっさり捨てられちゃって。私の事は一生懸命育ててくれてるけど、どうしても寂しくなってホスト通いしちゃうんです。生活費は私が管理するようにしてるんですけど時々隠れて使われちゃって。バイト代だけはばれないようにして、学費にしてるんです」
「……そっか」
それ以何も言わず、先輩は頭をポンポンしてくれた。
もうウィッグは気にしなくていいけど……きっとこれが最後、なんだ。
短い沈黙の後、先輩が大きく息を吐き出した。
「もう……留愛でもナナでもどっちでもいいや。俺は……お前がいい」
え……?
「許して、くれるんですか?」
「事情は分かったし、俺を騙そうと思って近づいたんじゃないのもわかってるから」
「せんぱーいっ」
思わず首に抱きついたら「場所を考えろ」って引き剥がされた。
先輩、冷たいんだから……。
だけどいいや。
斎藤先輩に言われて気が付いた。
及川先輩への気持ちだけは譲れないんだって。
他の人が好きだなんて嘘、つくのだけは絶対に嫌だったんだ。
この先何があっても、ずっと一緒にいられたらいいのに……。
急に先輩が真剣な表情になって言う。
「でも……店での事は忘れろ」
意味がわからなくて首を傾げる。
「店?」
「……メイドカフェ」
「どうしてですか? ゆうぴょんご主人様、可愛いのに」
「ばっ、そういうのがダメだって言ってんだよ!」
先輩、また赤くなって目を逸らす。
……可愛い。