そのイケメン、オタクですから!
及川先輩は一礼して話出した。

「……この学校でアルバイトをしている生徒の名簿です。全部で67人。実は、俺も入ってます。全員退学にしますか?」

私は先輩の言葉に飛び上って、机の上の名簿を手にした。

一番上は及川先輩。
バイトなんてしてないくせに嘘つき!

左からクラス、名前、バイト先、成績順位が並んでいる。
成績順位順になってるらしく、及川先輩の下には5位の桜井先輩が続いてる。

桜井先輩……バイトなんてしてたの?!
知らなかった。
だから私の事も黙っていてくれたのか。

いい人だと思ったら同類だったわけね。

二枚目をめくると上から2番目によっちゃんの名前がある。

バイト先は健くんの定食屋さんだ。
よっちゃんは決してバイトなんてしていない。

な、なにこれ……。

先輩が「なにやってんだ」と私から名簿を取り上げて校長先生に渡す。

「成績下位の生徒ばかりじゃありません。七瀬もアルバイトしてますが、成績は上がっているはずです。禁止にするよりも親の同意を確認した上できちんとアルバイト先を学校が把握すれば、問題はないと考えています」

校長先生は眉を寄せて名簿に目を落とした。
「……君の考えはわかった」

及川先輩は深く頭を下げた後、校長先生を真っ直ぐに見つめた。

整った横顔が物語ってる、決意を秘めた瞳。

「俺、T大理III受かって学校の進学実績上げるつもりです。退学になったら、もちろん実現できませんが。よろしくお願いします」

私の頭の上に手をおいてぐいぐい押してから、先輩は手を引っ張った。
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