そのイケメン、オタクですから!
帰り道よっちゃんに連絡すると、健くんの定食屋さんにいると返事が返ってきた。

お店を覗くと、おじさんが「留愛ちゃん今大変なんだってな。頑張れよー」と健くんの部屋に案内してくれる。

「ありがとうございます」とおじさんに会釈して扉をノックすると「どうぞ」と健くんの声が返ってきた。

長い付き合いだけど入るのは初めてだ。
まさかアニメのポスターに埋め尽くされていたり……しないよね。

ちょっと緊張しながら扉を開く。
目に飛び込んできたのは本棚のほとんどを埋めるDVD、ベッドに仲良く腰かけるよっちゃんと健くんだった。

「ごめんなさいっ」
顔を見るなりよっちゃんに頭を下げる。

ふふっと笑って「いいよ。先輩と話できた?」とよっちゃんが尋ねてきた。

「うん。私のせいでよっちゃんまで退学の危機にさらしちゃって本当にごめんなさい」
項垂れる私の肩をポンポン、とよっちゃんが叩く。
「大丈夫だよ。退学なんてならないよ、私も留愛も」

危機感のない声で健くんが続ける。
「退学になったら皆でうちの学校来ればいいじゃん。いいぞー。うち、軽くて」

そういう問題じゃない気がするんだけど。
健くんって、ちょっとの事には動じないというか、意外と器が大きいというか、よっちゃんが好きになるのも分かる気がする。

私の心を軽くしようと思って言ってくれているんだよね。
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