そのイケメン、オタクですから!
ざわざわしている人波をかき分けて、何とか教卓に近づく。

「何で書いたんだよ。生徒会長降ろされるかもしれねーじゃん。退学にだってなるかもしれないのに」
生徒の一人が及川先輩に詰め寄った。

「…………」
答えない及川先輩の斜め後ろから、「及川先輩は留愛の為に、皆の名簿出したんです。バイトがばれて留愛が退学になりそうだったから」という声が響いた。

よっちゃん、いつの間にあんなところに。
大人しい子なのに、私の為に精一杯叫んでくれている。

2年生の女子が言い返した。
「彼女さえ助かればいいって事なんじゃない」

「彼女の為に皆を犠牲にしようとしたかもしれない。でも自分も一緒に犠牲になろうとしてる。皆校則破ってバイトしてたのは同じでしょう? それを知ったのが及川先輩じゃなかったらもう退学になってたかもしれないのに、先輩を責めるなんて間違ってる」

涙声で反論するよっちゃん。

こんな場所で私何黙ってるの。
私のせいでこんなことになっているのに。

「すみませんでした!」
やっと及川先輩の横に辿り着いて、私は皆に向かって頭を下げた。

顔を上げると周りが静かになって、皆が目を丸くしている。
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