そのイケメン、オタクですから!
皆で大騒ぎした後、生徒会室に残ったのはいつもの4人だった。

「七瀬ちゃん、やっぱり変装はない方がいいね」
と桜井先輩が軽い口調で言う。

「ありがとうございます」と笑顔を向けると、及川先輩に首根っこを掴まれた。
「拓海にまで愛想振りまいてんじゃねーよ」

「振りまいてません!」と突っ込むけど、及川先輩は不機嫌そうだ。

「ふふ、悠斗は独占欲が強いから、心配が尽きないね」
桜井先輩は他人事って顔をしてて、よっちゃんは苦笑いしてる。

あと一年間、皆で過ごせるんだと思うと埃だらけの生徒会室が綺麗に見える。
埃だらけ……掃除しなきゃね。

「七瀬、コーヒー」
「はぁい」
いつものセリフも退学になったら二度と聞けないかもと思ったから、嬉しくて私はスキップしてポットに向かう。

「俺も」と隣に並ぶ桜井先輩。

そうだ、桜井先輩にきちんとお礼言えてなかったんだ。

「桜井先輩、名簿に名前書いて下さって、後バレンタインの時、背中を押してくれてありがとうございます」
深く頭を下げると「ふふ、いいよ。俺は女の子の味方だからね」と柔らかい声が降ってくる。

「……及川先輩の、為ですよね。どうして桜井先輩は、及川先輩の為にそこまでするんですか?」
前から気になっていたことを聞いてみる。

いつも先輩は女の子の為って言うけれど、名簿に名前を書いたのも私と及川先輩が付き合えるようにしたのも、本当は及川先輩の為だと思うんだ。

「……俺結構汚れちゃってるからさぁ、悠斗見てると眩しいんだよね。純粋なものって守りたくなるでしょ。七瀬ちゃんなら大丈夫だと思って。よろしくね」

軽い口調の桜井先輩の真意は伺えない。
いたずらっぽいけど優しい瞳をしてるから、本音な気もする。

「……はい。これからもよろしくお願いします」
私はもう一度頭を下げた。

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