そのイケメン、オタクですから!
「二人で退学にならなくて良かったな。お前の慌てっぷりは面白かったけど。校長先生も趣味悪いよな」
といつもの意地悪な笑みが見られたのは、それから少ししてからだった。
「本当ですよ。もう私、完全にダメだと思いましたもん」
「はは、俺も内心はヤバいと思った」
「本当ですか?」
「ああ」
「全然気づかなかった。先輩って学校では本当に冷静ですよね。メイドカフェとは別人みたい。そういえば、一体めいどいんふぁいとの何が気に入って通ってたんですか?」
前から疑問だったんだよね。
アニメ好きのカミングアウト以来、先輩の趣味が少しづつわかってきた。
アニメとフィギュアが好きらしいんだけど、別にアイドルは好きじゃないんだよね。
それによくよく観察してみると、ゆうぴょんご主人様が恥ずかしそうな顔をするのはナナ、そう、私にだけだった。
他のメイドとは極力話もしないけど、話しかけられたら普通に話してる。
「……ともきに誘われて初めて行った時裏道で泣いてる娘がいて、でもカフェでは無理して笑ってて、応援したくなった。また泣いてないかって気になって……これからは泣くときは、俺の前で泣けよ。ずっと……傍にいるから」
……そうなんだ。
やっぱりセノジュンレッドが指名してたのはナナだったんだ。
及川先輩はずっとナナの事、見守ってくれていたんだね。