そのイケメン、オタクですから!
裏口の前には……やっぱり過保護なお父さんみたいな顔をして及川先輩がいた。

「留愛、今日はどうした?」
「別に……」

突き刺さるような視線に、自分の言葉を一瞬で後悔する。
こんな言い訳、通じるわけがない相手だった。

「じゃなくて、ちょっと考え事してて」
「ステージ中に?」
「ごめんなさい」
「怒ってるわけじゃなくて……」

心配そうに顔を覗き込む及川先輩は本当に私の事を気にしてくれてるってわかる。

「ママが、引っ越ししようって言ってきたんです。どうしたのかなぁって思って」
「高町さんと一緒に住むって事?」
「そうじゃないみたいで。あ、もうちょっと高町さんの家の近くに住みたいのかな。私のせいで二人の邪魔してるんだし」

ママが高町さんと一緒に住まないのはあの日の事があるからだ。

高町さんがそれを知ってるのかはわからないけど、私のせいだというのは間違いない。

「そんな風に考えんなよ」
及川先輩がそっと私の左手を取った。

恥ずかしがりの先輩は外ではなかなか手を繋いでくれない。
私の不安を拭ってくれるかのように、ぎゅっと握られた。

「今日家、来いよ」
……急な誘いにどきりとした。
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