そのイケメン、オタクですから!
重い瞼を開くと長い睫が触れそうな距離にあった。
唇には何かが触れた後の余韻が残っている。

リアルな夢だったな……。
夢、なの……?

伏せられた瞼の下の瞳と視線がかち合って、及川先輩は目を見開いた。
「ごめんっ……」

起こしてごめん?
勝手にキスしてごめん?

「いいですよ」
先輩の頬が、紅葉みたいに色づいた。
私の頬も熱いから、同じ色をしているのかもしれない。

「留愛」
名前を呼ばれて唇を奪われた。
留まる愛で、るあ。

ママの愛はいつもどこかを彷徨っていたし、キラキラネームだと言われるから私は自分の名前が嫌いだった。
だけど先輩に呼ばれる度に、この名前で良かったと思うの。

先輩の愛がずっとここに留まってくれるように、願わずにはいられないの。
「せん……ぱい、す……き……」

酸欠の頭で途切れ途切れに呟く。
私に言える言葉はこれしかない。

お願い、ずっと傍にいて。
私から離れないで。
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