そのイケメン、オタクですから!
恥ずかしがり屋の先輩は、なかなか好きって言ってくれない。
でも私が言うと必ずこう答えてくれるの。
「俺も……」

もう一度唇を重ねながら、先輩の掌が遠慮がちにブラウスの胸のあたりに置かれた。
撫でるだけでボタンに手をかけることはしない。

だけどふわふわした雲を漂っていた私の意識は、突然コンクリートに打ち付けられた。
「やだっ」

考える暇もなく後ずさって先輩を押し退けてた。
両手を胸の前で交差させて肩を抱く。

一瞬目が合った先輩の傷ついた顔が浮かぶけれど、私はうつむいたままでいた。

何を言っても嘘っぽくて、言い訳なんてできない。
こういうことを拒絶したら嫌われちゃうなんて話を聞いたことがある。

先輩に嫌われるのは嫌だ。
でも怖い。
だけど、嫌われるのは嫌……。

「嫌いに、ならないで」
熱いものが頬を伝うのを止められない。

こんなこと言っちゃだめだって、頭の片隅では余計に重いと思われるだけだと分かってるのに。
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