そのイケメン、オタクですから!
「また入会希望者?」
ドアの向こうで迷惑そうな顔をしている人には見覚えがある。

桜井拓馬先輩だったよね。

童顔で女の人みたいに綺麗な顔をしているから背が小さいのかと思ったけど、意外と170㎝はありそうだ。
「はいっ。ぜひよろしくお願いします」

「どうする? 悠斗」
桜井先輩が振り返って奥に目を向ける。
薄く開いた扉から、長机の前の椅子に座った及川先輩が見えた。

「あ? 断れよ」
「だって。ごめんね」
桜井先輩が扉を閉めようとしたのを、思いっきり足を挟んで止める。

ドアにぶつかって足の小指が痛かったけど、今はそれどころじゃない。

断れってどういう事なのよ。

せっかく私の高校生活に光が見えたのに、ここで諦められるわけないでしょ。
「ちょっと待ってください!」
無理やりドアをこじ開けて部屋に押し入る。

「そうですよー。話くらいは聞いてくれても……」
消え入りそうな声ながら後ろからよっちゃんが加勢してくれている。

「ははっ、強引な女の子は嫌いじゃないけど」
ってとぼけたことを言いながら桜井先輩は道を開けてくれた。
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