そのイケメン、オタクですから!
「留愛ー? いるー?」
呑気なよっちゃんの声で、世界に色が戻った。
諦めている場合じゃない。

「静かにしてろ」
口に詰め込まれた布で声は出せないのに、掌で口を塞がれた。

「いないのかな?」
健くんの声がする。
お願い……気づいて……。

よっちゃんが不審そうに言い返した。
「でも一本道だよ。電話も出ないし」

鍵はかけていないから、ドアは手をかけてさえくれたら開く。

何とかして音を立てなくちゃ。

私は思いっきり足をばたつかせた。掃除していない部屋なのが幸いして、何かが足に当たって飛んで行き大きな音を立てた。

「やっぱり変だよ。留愛、開けるよ?」
訝しげな声と共に、光が差し込んできた。

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