そのイケメン、オタクですから!
……と思ったのに。

「きゃあ、可愛い! この子が噂の悠斗君?」
「悠斗より僕の方が可愛いでしょ」
「当たり前じゃない、たっくん大好きよ」

ピンクのワンピースに身を包んだ派手な女性と腕を組んで歩く桜井先輩に捕まった。
どう見ても私達より5つは年上の女の人は、桜井先輩が可愛くて仕方がないって顔をしてる。

「今日はナナモードなんだ。やっぱりそっちも可愛いね、七瀬ちゃん。悠斗が不機嫌になるはずだ」
桜井先輩はいつもの雰囲気で、恋人の前で私を褒める。

ご機嫌を損ねた彼女は、桜井先輩の腕を引っ張った。
「たっくーん。悠斗君の彼女に手を出しちゃダメでしょ。行こー」

「はいはい、じゃあね」
ひらひらと手を振る桜井先輩の後姿を見ながら考える。

やっぱり先輩の趣味は悪いと思う……。

「ふーん、拓海に褒められて喜んでるんだ」
斜め上から冷ややかな声が落ちてきた。

「違いますよ。桜井先輩ってよく彼女が変わるなぁって思ってただけで。先輩だって、可愛いなんて言われて頬染めてたくせに」
「誰が頬染めてたって?」
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