そのイケメン、オタクですから!
言い合いをしていたら、廊下の向こうから派手な女性が手を振ってきた。
「留愛ー」

桜井先輩の彼女に負けないような鮮やかなオレンジのワンピース。
7センチのヒール。

もう、いい加減アラフォーなんだからね……。

それでも彼女の隣を歩く穏やかな人は、温かい視線を彼女に向けてる。

「ママ、来てたの?」
「来てたのじゃないわよ。探したのよ。やっぱり可愛いわね。その制服。ママも20代だったら着たかったなぁ」

「あの……こんにちは」
とぼけたことを言っているママに深く頭を下げて、及川先輩が背筋を伸ばす。

「こんにちは。今日は留愛をよろしくね。……優しくしてあげてね」
鞄から小さな包みを取り出してママが及川先輩の掌に握らせた。

及川先輩が怪訝な顔で水色のリボンのかかった箱に目を向ける。
「あの、これは……?」
「夜までポケットにでも入れておいて。じゃあ行きましょ」
意味深な顔をして高町さんの手を取る。

会釈して背を向けた高町さんに、先輩が声をかけた。
「高町……さん。ありがとうございます」

振り返った高町さんは、一瞬だけ医師の顔をした……気がした。
「おめでとう、二人とも。じゃあ、またね」
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