そのイケメン、オタクですから！
ボスキャラ、意外といい奴って展開じゃない。
笑うと目尻が下がって可愛らしくも見えるし、狼からウサギに格上げしてあげよう。
下がったような気もするけど。

「1年２組の七瀬留愛です。この子は同じクラスの水島佳子です。よろしくお願いします」

「七瀬、な。自由な校風ってことは、俺のサポートしてくれるわけだ。しっかり働けよ……俺の言うことは絶対な」

にやりと口の端を上げる及川先輩は、やっぱり可愛くなんてない。
俺の言うことは絶対って……私は奴隷かっての。

こんな高慢な表情をする人だったんだ。
偉そうな、嫌な奴。

ウサギだなんて思って損しちゃった。こんな人やっぱり狼にしてやる。
……いや、意地悪そうだしキツネ？

「何か不満か？」
睨まれて「いえいえそんな、めっそうもありません」と掌でゴマをする。

今この人に逆らうのはまずい。
アルバイトの自由化さえ実現すれば、こんな奴後ろ足で蹴ってやるんだから。

すっかり狼に捕まったウサギの気分の私は、狼の耳をつけた及川先輩を蹴っ飛ばすところを想像してちょっとにやつく。

「お前、頭大丈夫か……？」
気味悪そうにこっちを見てくる狼に「さぁ、なんでもお申し付け下さい」と掌を広げた。

「留愛、本当にどうかした？」
後ろでよっちゃんまで私の事心配してるみたいだ。
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