そのイケメン、オタクですから!
第2章 生徒会選挙
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生徒会初日は簡単な説明と挨拶で解放されたから、そのまま学校を出た。
バイトのない日は学校の自習室で勉強して帰るんだけど、疲れちゃって今日はそんな気になれなかった。
及川先輩がオタクだってのは衝撃的だけど、彼は私にとって危険人物だ。
バイトのことがばれたら退学になるかもしれない。
私がナナだってこと、絶対にばれないようにしないと……。
自宅の最寄り駅で電車を降りると、空はオレンジ色だった。
こんなに早く帰ってくることは珍しい。
ママはもう仕事かな……と呟いてアパートの扉をくぐる。
玄関にはママのハイヒールと一緒に、男物の靴が転がっていた。
「……ただいま」
小さな玄関の先にはダイニングと呼ぶには狭いテーブルだけの部屋があって、奥に和室が一室。
後はトイレとお風呂場だけだから、どちらかの部屋にいるしかない。
「おかえり。留愛」
下着姿のママがテーブルで化粧をしていて、開いた襖から髪型がバッチリ決まった男の人が顔を出した。
「こんにちは」
甘ったるい香水とムスクの香りが混じって気持ち悪い。
「買い物行くの忘れてた。ちょっと行ってくるね。お仕事行ってらっしゃい」
鞄から財布だけ取り出して踵を返す。
「留愛」
ママの声を背に扉を閉めた。
「意外。愛子の娘ってあんななんだ」
「可愛いでしょ」
「……俺は愛子の方がいいなぁー」
「やっ、時間ないからだめよ……」
木の薄い扉から聞こえるやり取りが聞きたくなくて早足になる。
やっぱりこの時間に帰ってくるのはやめよう。
心に決めて商店街に向かう。
買い物って言ったけど、本当はそんな気はない。
冷蔵庫には野菜もお肉もあったけど、時間を潰して帰った後に作る気にはなれないや。
バイトのない日は学校の自習室で勉強して帰るんだけど、疲れちゃって今日はそんな気になれなかった。
及川先輩がオタクだってのは衝撃的だけど、彼は私にとって危険人物だ。
バイトのことがばれたら退学になるかもしれない。
私がナナだってこと、絶対にばれないようにしないと……。
自宅の最寄り駅で電車を降りると、空はオレンジ色だった。
こんなに早く帰ってくることは珍しい。
ママはもう仕事かな……と呟いてアパートの扉をくぐる。
玄関にはママのハイヒールと一緒に、男物の靴が転がっていた。
「……ただいま」
小さな玄関の先にはダイニングと呼ぶには狭いテーブルだけの部屋があって、奥に和室が一室。
後はトイレとお風呂場だけだから、どちらかの部屋にいるしかない。
「おかえり。留愛」
下着姿のママがテーブルで化粧をしていて、開いた襖から髪型がバッチリ決まった男の人が顔を出した。
「こんにちは」
甘ったるい香水とムスクの香りが混じって気持ち悪い。
「買い物行くの忘れてた。ちょっと行ってくるね。お仕事行ってらっしゃい」
鞄から財布だけ取り出して踵を返す。
「留愛」
ママの声を背に扉を閉めた。
「意外。愛子の娘ってあんななんだ」
「可愛いでしょ」
「……俺は愛子の方がいいなぁー」
「やっ、時間ないからだめよ……」
木の薄い扉から聞こえるやり取りが聞きたくなくて早足になる。
やっぱりこの時間に帰ってくるのはやめよう。
心に決めて商店街に向かう。
買い物って言ったけど、本当はそんな気はない。
冷蔵庫には野菜もお肉もあったけど、時間を潰して帰った後に作る気にはなれないや。