そのイケメン、オタクですから!
「バイトはどーよ?」
昔っからアニメ好きの健くんは、私にメイドカフェを教えてくれた人でもある。
チェックのシャツをインしたりはしないんだけどね。

ついでにメイド服と散弾銃の中では、黒髪に釣り目が特徴的なリリがお気に入りらしい。

「順調だよ。おかげさまで」
「お前のことだから、指名増えてるんだろ? 気をつけろよ。ストーカーとか」

心配してくれてるみたいだけど、大丈夫だよ。
自慢じゃないけどこの格好で街を歩いていて、声をかけられたことは一度もない。
男の人には。

女の人にはよく声をかけられる。
エステやら化粧品の販売員。
「お金ないんで」って断ってるけど、結構しつこいんだよね。

「行き帰りはこの格好だよ。ばれないから大丈夫」
健くんがじっと見つめてきて、うーんと唸る。

「確かに。いつ見てもすっげーダサいな。これじゃナナだとはわかんねーや」
「ありがと」

ありがとうと言うのも変だけど、この格好のおかげで助かってる部分は多いんだから仕方がない。

健くんは一度だけよっちゃんと一緒にバイト先に来てくれた事があるけど、すっごい照れててちょっと可愛かった。
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