そのイケメン、オタクですから!
「今日私ね、生徒会に入ったんだよ」
健くんが怪訝そうに眉を上げる。
鯖のみぞれあえがメインのヘルシー定食と、3種のフライが載ったボリューム定食が運ばれてきた。
「ありがとうございます」

お箸を割って二人でいただきます、と口をつける。
もごもごしながら、「で、何で?」と健くんが尋ねてきた。

アルバイトの自由化のこと、及川先輩のことを話す。
実は及川先輩がメイドカフェの常連だということも付け加えた。
「マジで。イケメンのオタクとかいるんだなー。学校では俺様キャラとか、ギャップ萌え?」

アニメ好きの健くんは、すぐにそういうことを言いだす。
そういうんじゃないから……。

「何言ってんの。私がナナだってばれたら大変なんだからね」
「だよな。で、その先輩は戦うメイドシリーズはナナが一番好きなのかな? 俺はやっぱリリが好きだなぁ。イベントとかも行ってんかな。どう?」

だよなって言いながら、全然心配してないよね。

頭の中はアニメの事ばっかりなんだから。
そんなんだから彼女出来ないんだよ、と余計なことを心の中で呟く。

健くんはアニメ好きだってことを隠したりはしてないけど、友達は二次元に興味はないらしいから、及川先輩と友達になったら意気投合しちゃったりして。

って、健くんを紹介するような流れになるわけないし。
そもそも先輩がオタクだって事を私が知ってることすら秘密なんだから。

「知らないっ」
って頬を膨らませたら、「それはナナの時じゃなきゃ効果ないぜ」って冷たく言われた。
健くん、意外と厳しい。
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