そのイケメン、オタクですから!
「運動得意なんですね」
体育館前を出て声をかける。

「中学ではバスケ部だったからな。何でもできるわけじゃねーよ」
「どうして高校では、バスケ部に入らなかったんですか?」

暫くの沈黙の後、及川先輩が答える。
「俺の成績ならここって担任に勧められて受けたけど、正直窮屈だろ?この学校。バスケ部は弱小だし、部活より勉強。とにかく学業優先、みたいな。生徒会なら何か変えられるかな、とか思ったんだよな」

ちょっと……照れてる?

体育館から校舎への渡り廊下は誰もいなくて、振り向かない先輩の表情は伺えない。

「って言っても一年だらだら過ごしてきたわけだけどな。一年じゃ何も出来ねーし、取り敢えず会長選挙に向けてそれなりに人気は獲得してきたつもりだけど」

うっ、それって私に対する嫌味ですか?
王子様は国民の信頼を得るため1年庶民として過ごしてきたって事ですか。

そりゃあ私だって一朝一夕で好感度が上がるとは思ってないけど、何か出来る事があると思ったんです。

「先輩の公約、自由な校風でしたよね。個性を出すって意味で制服はわかるけど、どうして多彩な部活動なんですか?」

隣に並んで顔を覗き込んだら、先輩は迷惑そうに一歩横に離れた。
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