そのイケメン、オタクですから!
「なんだよ。やたら突っ込んでくるな……」
「だって先輩のサポートするんですから、ちゃんと考え方も知っておきたいです」

「ふぅん、まぁいっか。うちの学校の部活ってどこにでもある部ばっかで面白くないだろ? 皆やる気もないし。どうせ進学校なら数学部とか弁論部とか、あってもいいと思わねぇ? いい成績残せば進学にも有利になるんだし。同じ目標を持ったり、同じ趣味の奴らと一緒に過ごせる時間って、学生の時だけな気がするんだよな」

ふむふむ。
なんとなく納得。
だから先輩は同じ趣味を持つオタクさんたちとメイドカフェに通ってるわけね。
……ちょっと違う?

「じゃあ……アルバイトの自由化は?」
本当はこれが一番聞きたかった。

でも一番に尋ねたら下心がばれてしまう気がして後回しにした。

まだ聞くのかってわざとらしいため息をつきながら、先輩は答えてくれた。


「ある……店で働いてる子がいて、仕事が好きかって聞かれたら、笑顔ではいって答えてたんだ。俺達と同じ高校生らしくて、学校でもてるだろって聞かれたら……急に顔が曇った」

……。
「どうして、ですか?」

「校則が厳しくて、バイトは秘密なんですって言ってた。好きな仕事してるのに秘密って、なんだかなぁって思って。
この学校にいるかもしれないじゃん」

「そ、そそそその子がですか?」
思いっきりどもってしまった。

だってその子って……ナナだよね。

やっぱり知ってるんじゃないですか。
それを知らん顔して、私が焦るのを見て楽しんでるんだ。

ここは土下座でもしてばらさないで下さいって言うところ?
「お代官様ー、どうかお許しをー」
と言いながら着物の帯を引っ張られてぐるぐる回る自分を想像してしまう。

……こんな時に何考えてんの、私。
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