そのイケメン、オタクですから!
挨拶回りを続けて生徒会室に戻ったら、桜井先輩が「どうだった?」と迎えてくれた。
よっちゃんは机に向かって、真剣に資料の整理をしている。

「ばっちりです。ね、せんぱ……」
「七瀬、コーヒー」
私の言葉は及川先輩の催促で遮られた。そのまま先輩はどかっと椅子に腰を下ろす。

もう、相変わらずなんだから。
「はいはいっ」と答えて冷えたマグカップを持ち上げる。
ポットに向かうと、よっちゃんが「私も手伝う」と着いてきてくれた。

「お疲れさま」
桜井先輩も来てくれたから、気になっていた事を聞いてみた。

及川先輩は生徒会室がお気に入りだけど、選挙前の今、他の会長候補は別の部屋を使ってる。
だから今は斎藤先輩と顔を合わせることはない。

「斎藤先輩って、厳しそうですね。及川先輩とは合わなさそうだし」

及川先輩をキツネだと思った事もあるけど、キツネは断然斎藤先輩の方がしっくりくる。
意地悪そうで、ずる賢そうで、苦手なタイプ。

キツネと狼か。
狼の方が強いよね……多分。

「悠斗が機嫌悪そうだと思ったらそのせい? 何か言われた?」
桜井先輩に顔を覗き込まれてちょっと緊張しちゃう。

「ちょっと、嫌なことを……」
さっきの事を全部言うのは告げ口してるみたいで嫌だったし、その後の教室での事は尚更口にしたくなくてごまかす。

「斎藤は悠斗の事ライバル視してるから。でもあんまり気にしなくてと思うよ。悠斗は挑発に乗っちゃうような奴じゃないし」
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