そのイケメン、オタクですから!
「はぁっ……はぁっ……」

息を切らしながらホームに滑り込んできた電車に乗り込む。
街へ行く路線だからそれなりに混んでいて座ることも出来ない。

ため息をついて何気なく隣の車両に目を向けると、思わぬものが目に飛び込んできた。
反射的に私はしゃがみ込む。

頭を抱えてダンゴ虫みたいに丸くなっていたら、前に座ってたおばさんが「しんどいの?」と席を譲ってくれそうになった。

「すみません、大丈夫です」と答えて窓際に移動する。

どうしてあの人はこんなにも目立つかなぁ。
人ごみの中でも彼に気づいてしまった自分にうんざりしながら、相手はヒーローだから仕方ないか、と思う。

セノジュンレッド……及川先輩だ。

生徒会は月、水、金。
今日は木曜日。

背のジュンジャーが来るのがいつも木曜日だったのかは思い出せないけれど、もしかしたらめいどいんふぁいとに行くつもりかもしれない。

ルルに会いに。

別にいいんだけど。
ってまた私、誰に言い訳?

背のジュンジャーの誰かがナナのファンなのは間違いないもん。
きっと指名はたくさんもらえるし、背のジュンジャーが来るのはイイコトなんだから。

思い込もうとするけど……でも。
ばれないようにしないと。

呟きながらダッシュして、一応周りを見渡して裏口からバイト先に入った。
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