そのイケメン、オタクですから!
あれ?
あれ?

食べようと思ったのに、ヘルシー定食が隣の席へ移動した。
「ちょっと!」
追いかけたのに、もう少しで手が届くってところでまた隣の席へ。

「待ってよ!!」
よく見たらヘルシー定食には紐が付いていて、紐の先には。

「健くん! 待ってよ!」
私のごはんー。
返してよって健くんを捕まえようとしたのに、私の手は空を切る。

「ばーかっ」
丸めた雑誌で健くんにポカリと頭を叩かれて……。

「何するのよ!」
顔を上げたら……あれ?

今カツ丼を、いやはんぺん丼を食べようと……。

……。
…………。

「やる気がないなら帰れ」
「……」

えーっと、今私勉強、してたんだっけ。
きょろきょろを周りを見渡す。

ここは……生徒会室。
目の前には……及川先輩。

「すすすす、すみません! やる気がなかったわけじゃないんです。全然わからなくて、気付いたら寝てて、本当にすみません!」

先輩は肘をついたまま、ハンカチを差し出した。
紺色のキチンとアイロンがかかったハンカチは、及川先輩らしい。

「口、拭けば」
えっ、と手を当てると、涎……。

慌ててポケットからハンドタオルを取り出して口を拭く。
勉強を教えてもらってるのに居眠りして、その上涎垂らして、私最低だーー!
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