そのイケメン、オタクですから!
カチッという音がして私は棚から2つのカップを取り出した。
紅茶のティーバックを入れて、ドリップコーヒーをセットしてお湯を注ぐ。

カップを両手に先輩の方に目を向けると、採点は終ったみたいだ。

そういえば及川先輩は、私の勉強なんてみてて大丈夫なのかな。

「先輩って、前回の期末学年何位だったんですか?」
尋ねるとあっさりと「1位」と返ってきた。

そっか。
1位かぁ。
……1位!?

「す、すごい……」
「ちなみに2位は斉藤翼。入学以来ずっとあいつが1位だったのを奪ったから、やたら目の敵にしてくるんだよな」

体育館前の廊下ですれ違った時のことを思い出す。
感じ悪かったもんね……。
会長選挙も及川先輩が勝ったし、嫌がらせとか大丈夫かな。

「変な顔」
え?
私、変な顔してた?

「お前が心配するようなことはねーよ」
カップを置いて空いた手に、はいって何か握らされた。

ん?
開いてみると包装された小さなチョコレート。
あ、これ、有名なお店のだ。

まさか私のために買いに行ったとか。
あるわけないよね。

「勉強には糖分が必要だからな。生徒会、クビになるなよ」
「……はい」

目を逸らして先輩が口にチョコを入れた。
不意打ちの甘さに心臓が騒がしくなる。

バイトでぶりっ子は慣れてるのに、こういうときは「ありがとうございまぁす」なんて笑えない。

どんな顔をしたらいいのかもわからなくて顔を伏せるしかなかった。
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