そのイケメン、オタクですから!
テスト前の授業は早く終わるから、毎日午後は及川先輩とみっちり勉強した。
土日はバイトがあったけどそれ以外は勉強に費やして……こんなに勉強したのは受験以来、もしくはそれ以上だったかもしれない。

おかげで私の成績は……。
「先輩っ、見てください」
「誰が教えたと思ってんだ。当然だろ」
隣には高慢な笑みの及川先輩が並ぶ。

学年27位。
何回見ても信じられない。

帰ってくる答案を見る度笑いが零れる経験なんて、初めてだった。
そして2年生の1位には及川先輩の名前。

よかった、私に付き合って成績落としてなくて。

「本当にありがとうございました。お礼は何がいいですか?」
ご機嫌で尋ねたら、先輩が考え込む。
「お礼……なぁ」

しまった。
ものすごい無茶振りされるんじゃ。

「あ……すごく高いものは無理ですよ」
慌てて言ったら「ばーか」って返された。

身構えすぎ?
しばらくの沈黙の後、先輩は真剣な顔になった。
「話したいことがあるから、明日時間くれねぇ?」
「……はぁ」

……話なんていつでも出来ると思うけど。
わざわざそんなことを言うなんて、どうして?
「じゃあ後でな」って言葉を残して先輩は教室に戻って行った。
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