そのイケメン、オタクですから!
生徒たちの声も聞こえなくなって、かじかんだ手をこすり合わせながら私はやっと事情を説明できた。

そうしたらよっちゃんは、「なぁんだ」って事も無げに言ったんだ。

「?」
私はきょとんとしてよっちゃんの顔を覗き込む。

「大丈夫だよ。心配ないから」
何かを確信してるような言い方。
「よっちゃん……何か知ってる?」

「んーーー、知らない」

絶対知ってる!

「知ってるでしょ?」
「知らない。いいから、帰ろー。こんなに冷えちゃって、留愛のせいだからね。温かい飲み物奢ってね」

ふふふって笑って、よっちゃんはご機嫌だ。
絶対何か知ってるのに、教えてくれない。

心配ないってどういう事なの?
じゃあ話って何?

頭の中は?でいっぱいだけど、あまりに能天気なよっちゃんにホッとしてる自分もいる。
とりあえず、ばれたわけじゃなさそうだ。

それならまぁ、いっか。

「ココア飲みたい。駅前のクレープ屋さんどう?」
「奢るのはココアだけだからね」
気を取り直してよっちゃんの誘いに乗った。
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