そのイケメン、オタクですから！

違った……。
そういえば、先輩の私服って見たことない。
あのオタクファッションで来られたらどうしよう。

いくら顔が良くても、むしろ顔が格好いいのにあのファッションじゃ注目されるのは間違いない。
それならいっそ黒縁メガネの方がましなような。

一人であれこれ想像していたら、今度は隣の女の子達が「あの人格好いいー。彼女と待ち合わせかな。いいなぁ、あんな彼氏」と騒ぐ声が耳に届く。

彼女達の視線の先を辿っていくと……いた。
及川先輩だ。

私の想像を軽く飛び越しちゃった先輩は、きょろきょろと周りを見渡してる。
ベージュのスリムなパンツに紺のシャツ、ジャケット。
文句のつけようがないぐらい、オシャレだ。

ハッとして自分の服装を見る。
チェックのマキシスカートにブーツ、ファーのついた白のショートコート。

別に変な服装はしてないと思うけど、大丈夫かな。
ウィッグだから跳ねてるわけもないってわかってるのについ髪を触る。

学校以外の場所で先輩に会うなんて、何だか緊張してきちゃた。

深呼吸－。深呼吸―。