そのイケメン、オタクですから!
ポカッと頭を叩かれた。
「何回かけたと思ってる?」
「ひぇっ」
いつの間にか目の前に来ていた及川先輩に素っ頓狂な声が出てしまった。
先輩は眉をひそめて私の左手を指さしている。
左手のスマホは確かに緑の光がチカチカしていた。
うぅ、隣の女子達の視線が痛い。
まさか彼女じゃないよねって目でこっちを見ないで。
「す、すいません。あの、出来れば二人きりになれるところに行きませんか……?」
とにかくこの場から逃げ出したくなって変な事を言ってしまった。
上から目線でお前馬鹿か、とか返ってくると思ったのに、あれ?
先輩、顔が赤い……?
イルミネーションの光の加減かな。
「ば、馬鹿……な、なに言ってんだよ、行くぞ」
背を向けて歩き出しちゃった。
先輩、今日はオタクモードなのかな?
制服を脱ぐと性格も変わっちゃうとか?
そういえば昔そういうドラマがあったような。
なんて、アニメみたいな事考えちゃった。
「どこ行くんですか?」
気を取り直して隣に並ぶ。
「一応店、予約しといたから」と先輩。