そのイケメン、オタクですから!
連れて行ってくれたのは、オシャレなイタリアンレストランだった。
店内はクリスマスムードで照明も暗め、各テーブルにキャンドルが置かれている。

お客さんはほとんどがカップルみたい。
まさか、私達も、カップルに見える……?
意識しちゃったら急に恥ずかしくなる。

な、何を話せばいいのかわからない……。
生徒会室ではテレビの話とか、スイーツの話とか、結構雑談も弾むのに。

って言っても私とよっちゃんが喋ってる横で、時々先輩が皮肉っぽく口を挟む感じなんだけど。

2週間一緒に勉強してた時には休憩中に色々話した気もする。
でも今は頭真っ白になっちゃって何を話したかも思い出せない。

「あの、話ってなんですか?」
そうだ、これしかないって思って口を開いたのに、及川先輩は「あ、あぁ、それは後で……」って言葉を濁す。

どうすればいいのよ?
よっちゃん、違う意味でピンチなんだけど!

気まずすぎる沈黙から救ってくれたのは、美味しすぎる料理だった。

事前にコース料理が予約されていたらしく、健くんの定食屋さんでは絶対に出ないようなオシャレな料理が次々と並ぶ。

いや、健君のお父さんの料理は最高だけど、たまにはこういうの食べてみたかったの。
「先輩、このスモークサーモン美味しいですね。それにトマトとモツァレラチーズって、最高のバディですね」
「なんだよ、それ」
「だって美味しくて。もう離れないでほしい」
「バカ」

先輩もいつもの調子が出てきたみたいで、憎まれ口を叩く。
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