そのイケメン、オタクですから!
和やかな空気で食事は進んで、満腹のお腹を抱えて店を後にする。
外は風が冷たくて首を竦めたけど、心は温かかった。

待ち合わせのクリスマスツリーの前に戻る。
駅前広場のツリーだから、ここで別れることになるのかな。
先輩の家は私の乗る電車とは逆方向だ。

思った以上に楽しかったから、私の口から素直な気持ちが零れていく。
「今日はありがとうございました。うち母親しかいないんですけどいつも仕事とか遊びに行ってて、一緒にご飯食べたりしなくて。クリスマスイブに一人になるところだったから誘ってもらって嬉しかったです」

微笑んで改札に向き直ったら、右手首が掴まれた。
そのまま掌に何か握らされる。

「誕生日に……だろ?」
「知ってたんですか……?」

びっくりした……。
先輩に向き直って視線を落とすと、私の右手にはリボンで飾られた小さな箱が収まっていた。

そう、今日は私の誕生日。
まさか先輩からプレゼントをもらえるとは思わなかった。

「それに俺、まだ話、してない」
先輩が私から目を逸らして小さく息を吸った。

そうだった。

料理が美味しくてすっかり忘れてた。
誕生日の事はよっちゃんから聞いたんだろうけど、話ってなんだったんだろう……?
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