そのイケメン、オタクですから!
身構えるけど、先輩の目は泳いでる。
息が白いから寒いんだろうけど、頬も赤い。

「七瀬……す……」
「す……?」

す……?

「きだ」
「へ?」

す……きだ……。
好きだ?

絶対違う。
聞き間違いだ。
人ごみで声も聞き取りにくいし、寒さで私の耳がおかしいのかもしれない。

「あの、今なんて……?」
今度は聞き逃さないように、と耳に全神経を集中させながら先輩の瞳を覗き込む。

及川先輩は耳まで真っ赤になりながら、もう一度小さな声で言った。
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