そのイケメン、オタクですから!
「七瀬が……す、好きだって、言った……」

聞き間違いじゃなかった……。
今度は私が真っ赤になる番だった。
頬が熱くて冬だと忘れそう。

メイドカフェではよく告白される。
冗談混じりの告白や、店外に呼び出されて真剣な告白をされたこともある。

でも……でも……。
高校に入ってから七瀬留愛が告白されたのは初めてだ。

肩までの黒髪、長めの前髪。黒ぶちめがねに浅黒い色ファンデーション。顔色が悪く見えるベージュの口紅。
今日もいつもと同じ私。

クラスメイトに女子としては見てもらえない留愛の事が、先輩は好き……?

完全にいつもの俺様風雰囲気はなくて、先輩は恥ずかしそうにそっぽ向いてる。
メイドカフェでは何回か見たことがある顔。

それが今、ナナじゃなくて私に向けられてる。

う、嘘でしょ……。
私も妙に恥ずかしくなってうつむいた。

「返事、今すぐはいい。お前が俺の事、そういう風に見てないのはわかってるし。でも、考えといてくれよ……じゃあ、気を付けて」

靴音がして顔を上げたら、先輩の後ろ姿はもう改札の向こうに消えるところだった。
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