そのイケメン、オタクですから!
第4章 ナナと留愛の一つの決断

1

冬休みに入ったけれど、部活がある間は生徒会活動もある。
各部の活動や部費のチェックをするのも生徒会の仕事だ。

という事は、今日も生徒会はある。
バイトは休みにしているから、休む理由はない。

だけど……。
どんな顔して会えばいいの?

家に帰ってから小さな包みを開くと、ハートモチーフのネックレスが入っていた。
控えめなハートが可愛い。

何度も首にかけようとしたけれど、出来なかった。
ネックレスを身に着けるってことは先輩の告白を受け入れるってことだと思ったから。

先輩が好きなのか、わからない。
でも私は嘘つきで、自分の都合で先輩の事を利用している。

だから、そもそも先輩に好かれる資格なんてないんだ。

無駄に寄り道をして遅刻しながらも校門をくぐると、校舎の窓の一つから「留愛ー」という大声が聞こえた。

よっちゃんだ。
クリスマスイブは家族でクリスマス会だからって、昨日は私の事を誘ってくれていた。
だけど私は短い断りのメールを送ったままだった。

小さく手を振るとよっちゃんの姿が窓から消えた。
体調が悪いのかと心配して、迎えに来てくれるのかも。
身体は全然悪くないんだ。
重いのは、心だけで……。

窓の中で動く人影にどきりとする。
及川先輩は……来てる?

よっぽどの理由がないと休むような人じゃないから、きっと来ているよね。

門から下駄箱までこんなにゆっくり歩いたのはきっと初めてだ。
上靴のままでよっちゃんが校庭まで飛び出して来て、私の顔を覗き込んだ。

「どうしたの、留愛? 調子悪いの?」
やっぱり心配してくれている。
「ごめんね」と呟いて続ける。
「ちょっと話、いい?」

やっぱりこんな気持ちのままで生徒会室には行けない。
よっちゃんに、聞いてほしい。
< 79 / 193 >

この作品をシェア

pagetop