そのイケメン、オタクですから!
1年3組。
冬休みだから、私達の教室には誰もいない。
誰かが忘れていった緑の手提げがポツンと残ってるだけ。

休み時間にいつも座る窓側の席に二人で並んで、外に目を向ける。

話をしてもいいかって聞いたくせに沈黙してる私。
こういう時、よっちゃんは無理に聞き出そうとしない。

カーテンを弄ったり窓にもたれたりしながら、私の心の整理がつくのを待ってくれる。
普段は割とミーハーなのに口は堅いし、大切なことはちゃんとわかってる子なんだ。

「先輩に……告白されちゃった。先輩って趣味悪いよね。こんな私がいいなんて。
私が男の子だったら一緒に歩くのも恥ずかしいのに。まさか私がナナだって知ってて言ってるのかな。だったらびっくりだよね。全然気づいてないみたいな顔してるくせに。
それともモテるから、たまには地味な女と付き合ってみたかったのかな。なんて、そもそもからかわれてるのかもしれないよね。それで悩むとか、私も馬鹿だなぁ」

何か言っていないと気まずくてよっちゃんが口を挟めないように喋り続ける。
喋ってるうちに、何故だか涙が滲んでくる。

「ホント、馬鹿」

きつい一言。
よっちゃん、ひどいよ……。

「先輩が気づいてないことも、本気だってことも分かってるんでしょ」

……。

やっぱりよっちゃんには嘘なんてつけない。

普段私の事をからかったりはするけど、そんな時の先輩は俺様で、上からで、決して目を逸らして恥ずかしそうにしたりはしない。

それに先輩はきっと、気持ちのない女の子に気を持たせるようなことはしない。

同じ学年に先輩に告白した子がいたけど、きっぱりと振られていたらしい。
「俺は自分が好きになった奴としか付き合えない」って言ったって聞いた。
その子はそこまではっきり言われると、むしろ清々しいって言っていたけれど。
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