そのイケメン、オタクですから!
よっちゃんは続ける。
「で、どうして泣いてるの?」

……?
どうしてって、だって……だって……えっと……どうして私泣いてるの?

「留愛は先輩に言えないことがあるよね。個人的には言えばいいと思うけど、留愛は校則が変わるまで言うつもりはない。
じゃあもしも秘密がなかったら、どうしたいの?」

もしも秘密がなかったら。
もしも私がナナじゃなかったら。

私は……どうしたい?

考えて、考えて出てきた言葉は。
「わかんない……」

よっちゃんは困ったみたいな笑顔で言った。
「じゃあ先輩の顔見てから決めれば? はい、涙拭いて行こ」

先輩の顔見てって……。
そんな無茶な。

よっちゃーん!


泣いてたせいで目が腫れてると思うけど、学校ではわざと腫れぼったく見せるメイクをしてるから違和感はないと思う。

「おはようございます……」
よっちゃんに引っ張られるようにして生徒会室の扉を開くと、いつもの席に及川先輩の姿が見えた。

急に心臓が忙しくなる。
こんなの、意識するなって方が無理でしょ……。
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