そのイケメン、オタクですから!
集中していたから時間はあっという間で、気付くと空は薄暗くなって下校時間が近付く。

生徒会室に残っているのは私と及川先輩、よっちゃんと桜井先輩だけだった。

楽しそうに鉛筆を動かしていた及川先輩が私に目を向ける。

「出来たか?」
自分の仕事はとっくに終わっちゃったらしくて、絵を描いてるみたい。

「何描いてるんですか?」
覗き込もうとしたらさっと隠された。

隠されたら見たくなるのが心情ってものじゃない。
「せんぱーいっ」と後ろからこちょこちょしてやる。

及川先輩は耳を真っ赤にして横に飛び退いた。

画用紙に描かれているのはうちの制服のアレンジで、文化祭のファッションショーの原案もある。

どれどれ、とよっちゃんと桜井先輩も覗き込んできた。

「意外……先輩、絵がうまいんですね」思ったまま口にすると「うるせーよ」って返ってきた。

わぁ、照れてる……。
ついでに私は、気になっていたことを付け加えてみる。

「ちょっとアニメっぽいけど」

そう。
先輩の絵は美術部が描きそうなシャープなものじゃなくて、丸みを帯びてて可愛らしい。

「もう、いいだろ」ってスケッチブックを引ったくられた。

「それ制服と個性の共存の案だよね? 恥ずかしがってちゃダメでしょ」
悪魔的な笑顔で、桜井先輩が取り上げる。
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