そのイケメン、オタクですから!
始業式が終わると、短い3学期が始まった。
3年生は受験でピリピリしているからアンケートの対象者は1、2年生のみだ。

「えーっと、質問1、してみたい……。やったぁ先輩、これで50パーセントは超えたんじゃないですか?」
アンケートの結果に思わず弾んだ声が出る。

「んー、むしろ思ってたより低いだろ。
進学校は真面目ばっかで困るぜ」
及川先輩は難しい顔をしてパソコンのグラフが完成していく様を見ている。

確かに保護者アンケートの結果ではバイトをさせてみたいは30%に留まっていた。
残りは30%がどちらともいえない、40%はさせたくない。

でも少数派ながらも、お小遣いぐらいは自分で稼ぐべきだ、なんて意見もあった。

「ま、何とかなるか。署名はどうだ?」
隣のよっちゃんが、黒い表紙の用紙を捲って答える。
「んー、1年は40%ぐらいは。でも2年生はまだ20%ってとこですね」

受験はまだまだ先の1年生は気楽だから簡単に署名してくれてるけど、2年生は内申点の事が気になるのか、なかなか進まないのが現状だ。

「成績上位者から当たっていけよ。下位者に書かせるときには上位者が書いてるってアピールしろ。後適当な名前を書いた紙3枚ぐらい追加して、もうこんなに集まってますって見せとけ」

他の生徒会メンバーに次々指示を出していく及川先輩は、会長の名前に相応しい落ち着きがある。

何だか、ちょっと格好いいかも。
いやいや、私何考えてるの。

早いものでクリスマスイブから1か月半が経つのに、私は先輩に何の返事もしていない。
二人きりになることもないんだけど、先輩から何か聞かれる事もない。
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