そのイケメン、オタクですから!
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「おかえりなさいませ、ご主人様」
通りがかりの教室で、白いエプロンに紺のワンピースの女の子が媚びた笑顔を浮かべてる。
前を歩いていた男の子が「可愛いー」と店に入って行った。
「なにあれ、絶対留愛の方が可愛いのに。ほんっと損だね。その恰好」
隣でよっちゃんが憤慨してる。
よっちゃんこと水島佳子は私の親友で、この学校で唯一私の秘密を知ってる人。
留まる愛で、るあ、と読む私の名前は母がつけた。父の愛が母のもとに留まっていてくれていたら、今私はきっとこの格好はしていなかった。
日本人形みたいな肩までの黒髪、長めの前髪はウィッグ。黒ぶちめがねに浅黒い色ファンデーション。顔色が悪く見えるベージュの口紅。瞼の上には腫れぼったく見えるように濃いめのベージュのアイライン。
制服のスカート丈は膝下で、誰も履かない学校指定の白いハイソックス。
「ありがと。でもいいんだ。だってばれたら、死活問題だもん」
「だよね……ごめんごめん。せっかくだし楽しもうよ」
うん、と笑ってよっちゃんと校内を回る。
高校に入って初めての文化祭は、進学校だからか地味だ。
さっき目についたメイドカフェなんて珍しくて、ほとんどのクラスが作品展のような感じで教室を公開しているだけ。
この前よっちゃんと遊びに行った健くんの高校の文化祭は、本当にお祭りって感じで楽しかったのにな。
だから後ろから聞こえてきた声に興味を惹かれた。
「2年3組のファッションショー、もう始まるよ。早く早く!」
パタパタと足音が聞こえて、女の子たちのグループが私達を追い抜かして行く。
その後もあちこちからそんな声が聞こえて……。
通りがかりの教室で、白いエプロンに紺のワンピースの女の子が媚びた笑顔を浮かべてる。
前を歩いていた男の子が「可愛いー」と店に入って行った。
「なにあれ、絶対留愛の方が可愛いのに。ほんっと損だね。その恰好」
隣でよっちゃんが憤慨してる。
よっちゃんこと水島佳子は私の親友で、この学校で唯一私の秘密を知ってる人。
留まる愛で、るあ、と読む私の名前は母がつけた。父の愛が母のもとに留まっていてくれていたら、今私はきっとこの格好はしていなかった。
日本人形みたいな肩までの黒髪、長めの前髪はウィッグ。黒ぶちめがねに浅黒い色ファンデーション。顔色が悪く見えるベージュの口紅。瞼の上には腫れぼったく見えるように濃いめのベージュのアイライン。
制服のスカート丈は膝下で、誰も履かない学校指定の白いハイソックス。
「ありがと。でもいいんだ。だってばれたら、死活問題だもん」
「だよね……ごめんごめん。せっかくだし楽しもうよ」
うん、と笑ってよっちゃんと校内を回る。
高校に入って初めての文化祭は、進学校だからか地味だ。
さっき目についたメイドカフェなんて珍しくて、ほとんどのクラスが作品展のような感じで教室を公開しているだけ。
この前よっちゃんと遊びに行った健くんの高校の文化祭は、本当にお祭りって感じで楽しかったのにな。
だから後ろから聞こえてきた声に興味を惹かれた。
「2年3組のファッションショー、もう始まるよ。早く早く!」
パタパタと足音が聞こえて、女の子たちのグループが私達を追い抜かして行く。
その後もあちこちからそんな声が聞こえて……。