そのイケメン、オタクですから!
ため息をつくと、さっきの2年生の女子が隣に並んだ。
あからさまに不機嫌な態度で私を睨んで吐き捨てる。

「あんた及川君と釣り合うと思ってんの? 気に入られてんのなんか気まぐれにきまってるじゃん」

……。
言い返したかったけど、何も口に出来ず唇を噛んだ。
2年生の女子は気が済んだのか戻って行く。

釣り合うとか、そんな事考えてないし。
気まぐれだってわかってるし。

なのにどうして、こんなにイライラするんだろう。

「お、今日も可愛いね」
いつの間に傍に来たのか、桜井先輩が甘い笑顔を見せる。

「冗談やめて下さい」
「冗談じゃないのに。その変装も可愛いよ。ってか俺、女の子は誰でも可愛い」

変装って、どういう意味?
突っ込む気力は残っていなくて、「はいはい」と適当に返事しておく。

桜井先輩のストライクゾーンは異常に広い。
下は10歳から上は90歳までいけるって言ってた。

本当か知らないけど、10歳は犯罪なんじゃ……。

考えてたら何だか馬鹿らしくなってきた。
ふふっ、と笑って、無言で先輩の前にコーヒーを置いて席に戻る。

気にするのはやめよう。
今は公約実現に全力投球だよね。

及川先輩が私を見ている気がしたけど、もう気にしないことにした。
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