そのイケメン、オタクですから!
アンケート結果の集計と署名を学校に提出した日の帰り道、生徒会が早く終わったから私は2つ隣の駅で降りてみた。

インターネットで調べたら本当に「高町クリニック」っていう病院はあったけど、ママのお客さんが適当なことを言ってるだけかもしれない。

淡いオレンジと白の壁。わりと新しそうな病院の前に立ってみると「心療内科」と書いてあった。

内科や耳鼻科なら適当な理由をつけて受診しようと思ったけど、心療内科ってどう言ってかかればいいのかな。

眠れない、とか?
多分精神的に悩みがある人が来る病院だよね。

悩みは色々とあるけど、私はお医者さんに相談するレベルじゃないんだけど。

とりあえず受付に向かう。
受付は愛想のいい女の人で、待合室で問診票を書くように言われる。

待合室は細かく区切られていて、患者さん同士が顔を合わせなくていいようになってるみたい。

問診票には頭が痛くて眠れない、と書いておいた。
頭が痛いのはウィッグをつける時間が長すぎるからで、眠れないのは時間がないからなんだけど。

「受付番号28番の方、診察室にお入り下さい」
看護師さんに呼ばれて診察室に向かう。

扉を開くと、ひょろりとした柔らかい表情の先生がいた。年は40くらいなのかな。

ちょっとたれ目で、癒しのオーラが漂ってくる。
「七瀬……留愛さん。こんにちは、どうぞ」

勧められた椅子に座る。
何て言えばいいんだろ……。
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