そのイケメン、オタクですから!
「お母さんの彼氏に会いに来たのかな?」
「えっ?」
「珍しい名前だしね、彼女はいつも君の話をしているから」
「そうなん、ですか?」

ママは男の人のことばっかり考えているのかと思ってた。

「バイトと生徒会で忙しいんだってね。愛子さん君の身体のこと心配してるよ」
先生は穏やかな表情で言葉を紡ぐ。

でも、優しそうだからって信用できるわけじゃない。
診察には看護師さんの姿はなかったけれど、私は一応声を低くした。

「母とは、どういうつもりで付き合ってるんですか?」
「真剣に付き合っているよ。結婚したいと思ってる。君の同意が得られれば、だけれど」

「ホステスをしている女性、しかも子持ちの女性を妻にすることに抵抗はないんですか? 先生も、子どもがいるんですか?」
「職業に対する偏見はないつもりだし、子どもがいても構わないと思ってる。僕は初婚だけどね。子どももいない」

「性的対象として高校生を見たことは?」
「唐突な質問だね。ないよ。自分が学生の時を除いては、ね」

「お金に困ってないんですか?」
「もしも望めば、だけど君たち親子を養うくらいの収入はあると思うよ」

失礼な質問を並べ立てる私に、相手はあくまでも冷静だ。

怒らせて本音でも聞けたらと思ったけど、余りにも大人だった。
完全に私の負け。

「お仕事の邪魔してすみませんでした。失礼します」
私は頭を下げて立ち上がった。

「……また、会えるかな? 出来ればクリニックの外で」
「……はい」
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