うそつきなあなたへ

「お嬢ちゃん、すまない。俺にしっかり捕まってくれ」

吟遊詩人に言われた通りに彼をぎゅっと抱きしめると、彼は走りだしました。
後ろのほうで、声がしますがどんどんと遠くなっていくのがわかりました。
少しすると、吟遊詩人は立ち止まり下ろしてくれました。
辺りには、人がいません。

「ここまで、くればやつらもこないだろ。走ったな、お嬢ちゃん、怪我はないかい?」

「ううん、お兄さんが守ってくれたから一つもない」

「そうか、なれならいいんだ。ごめんな、俺のせいで辛い気持ちにさせてしまって」

「それは、気にしてないからいいの。それより、どうして何も言い返さないの? 異邦人だと言われて悔しくないの? お兄さんはとっても素敵な歌を歌うのに、どうしてそれを否定されないといけないの?」

「まあまあ、落ち着けって。可愛い顔が台無しだぞ」

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