うそつきなあなたへ

今は関係ないの!という言葉を遮るように、吟遊詩人は少女の頬を、手で掴みました。
はは、小鳥みたいと笑う吟遊詩人に言い返そうとしても、彼の思うがまま。
しばらくの間、2人でそうやっていました。

「今は辛いかもしれない」
吟遊詩人がぽつりと話し出しました。

「感情に任せて、怒鳴り散らした方が楽だ。スッキリする。けれど、周りはどうなる? 心に棘が刺さる。その棘がいっぱいになるとまた違う誰かに感情をぶつける。それじゃあ、堂々巡りだ。だから、そのときは時間を頼るんだ。面白いことに、お金持ちも貧乏人もみな時間は平等だ。 ただ時間が解決してくれるのを待っていたほうがいいことがある。長い人生で見ると、正直でいたときが得するんだ」

だからと、言いながら吟遊詩人は手を放し、少女の目線の高さまで屈みました。

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