うそつきなあなたへ
さっきとは別の道を歩いていくとまた人が多くなってきました。
そして一部の人たちは何やらある建物に入っていきます。
少女は、その流れについていこうとすると、吟遊詩人は立ち止まりました。
「お嬢ちゃん、これを持っていきなさい」
差し出された手の中には、硬貨が2,3枚。
「入るときに入り口の前にいる人に、これを渡すんだ。お金がないと入れないからね」
「どうして、お兄さんも一緒に入ればいいじゃない」
「俺もそうしたいんだが、この先へは進めない。この街の掟なんだ」
「そんな、それじゃあ私も行かない」
「この中にいる人に聞けば、もとの世界に戻る手がかりを知っているかもしれない。街一番の踊り子だ、俺よりこの街のことを知っている」
「でもでも、1人では行けないわ」
段々と、少女の顔は下がり、吟遊詩人の足元しか見えません。今、彼はどんな顔をしているのでしょうか。