うそつきなあなたへ

「ご ご ごめんなさい……! あの、私てっきり女性の方だと思ったの」

素早く手で目を覆い、弁解したのですが、彼女は今、この建物内では部外者であり、それは逆効果だということに後から気がつきました。
しまった、せっかくここまで来たのに全部台無しだと後悔していると

「目をあけていいよ」

と、いう声が頭の上から聞こえてきました。
恐る恐る目をあけてみると、服を着た踊り子が少女の顔を覗き込んでいました。
彼女は、その間でさえ、綺麗な顔だとじっと見つめましたが、自分が置かれている状況を思い出し、狼狽えました。そんな彼女を見て、踊り子はにっこりと微笑んで

「怯えなくていいよ、君のことを突き出すことはしないから。見慣れない顔だね、街の外の子?」

と優しく話しかけてきました。

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