うそつきなあなたへ


騎士も初めて会った時よりも、笑うようになりました。
難しい顔をしているより今の顔の方が、ずっと素敵だと少女は思いました。


「騎士さん、王子さまは一体どんな人か教えてくださる?」

「俺なんかよりも、とても素敵な方なんだ。いつも国民のことを考えてくれるし、部下からの信頼も厚い。俺は、あの人のもとで生涯過ごすと決めているんだ」

「生涯って死ぬまでってこと? ずっと王子さまの傍に仕えるの?」

「そうさ、王子が死ぬ時が俺が死ぬときだ。しばらくは、そんなことはないと思うけれど」

「騎士さんは、愛する人はいないの? この人と添い遂げようと思ったことは?」

騎士としての使命を果たすこともとても素敵なことですが、騎士には愛する家族がいてそれを守る姿も似合っていると思ったからです。

けれど、騎士は黙ってしまいました。

< 51 / 115 >

この作品をシェア

pagetop