うそつきなあなたへ

門をくぐり、城内へと入って行きます。そこは、街中とは違い威厳な作りをしていました。
背筋が自然と伸びる気がしました。

「そんなに緊張しなくていい、みんな君のことを歓迎している」

「そうだといいけど……」


馬は、しばらく走ってから城の大きな広場で止まりました。
騎士は、少女を降ろしてから少し待っていてくれといい、馬に乗ってどこかに行ってしまいました。

何もすることがない少女は、ただ広場から見える街を見下ろしていました。
今日1日で、たくさんたくさん歩いたんだなと思っていると、いつも間にか横に、騎士が立っていました。その顔は、笑っているのか、泣いているのかわからない顔でした。
彼女は、話しかけることはせず、じっと騎士の顔を見つめていました。

「俺には、この国を守る使命がある。この国を守るということは、同時に大切なものを守ることでもあったんだ。俺は、それを誇りに思っていた。」

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