うそつきなあなたへ

けれど、それは打ち砕かれてしまった。よく晴れたある日のことだった。
その日も、戦が始まろうとしているときに、国から一報が届いた。それを受け取った瞬間、なんだか嫌な予感がして背筋が凍ったことを今でもよく覚えているよ。
僕は、父上を置いて急いで城に帰った。何十日ぶりかの城は、僕を部外者として拒むかのように建っているかのように思えた。

急いだけれど、僕は間に合わなかった。1人は戦火で1週間前に、もう1人はその悲しみと寂しさのあまりに禁断の果実を口にした。その果実を口にした者は、もう2度と目を覚まさないと言われていた。それを知っていて口にしたのだ。僕は、国中の者を集めてあらゆる手段を施した。けれど、全てが手遅れだった。僕は取り返しのつかないことをしたんだ」

優しい笑顔の裏で、こんな壮絶なことがあっただなんて誰が想像できるでしょう。
少女は、何もすることが出来ずにただ王子を見ているだけしか出来ませんでした。

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